交響詩篇エウレカセブン雑感・レントンの父親探し

 やー終わりましたねエウレカセブン。紆余曲折あって結局このアニメは何をやりたかったんだろうと考えると、レントンの「父親探し」がメインテーマだったのかなあ、て思ったり。
 アドロック・サーストンという歴史の教科書に載るような偉大な父は、しかしレントン父親をしてはくれず、彼の元を去ってしまう。祖父と二人暮しの退屈な日々に、憧れのゲッコーステイトと出会い、彼の「父親探し」が始まる。
 ここで言う父親探し、というのは実の父のアドロックを探す、と言うことを直接指すものではなく、父親をやってくれる人、と言う意味。そしてレントンが最初に出会う父親候補が憧れのホランドだった。現にホランド自身も誰かが父親をやらなくてはいけないという旨の発言をしているが、レントンにとって彼はあまりにもダメな父親だった。エウレカとの関係が悪化する中、ホランドには既に何の情も持ち合わせていないことを明かしている。ゲッコーステイトと行動を共にする道中も、彼の前には何人か「父親候補」が現れた。しかしどの大人もみなダメダメで自分のことしか考えない。食料を求めたどり着いた地にいた叔父はメンツのことしか頭になく、祖父に近い何かを感じ親近感を覚えた老人には無残に裏切られる。
 やがて戦いに疲れたレントンゲッコーステイトを離れ、流浪の末、ついに理想の父親に出会う。チャールズ。彼は寛大でレントンに甘く、そして良く褒めてくれる。ホランドがしてくれなかったことをみんなしてくれる彼に良く懐き、またチャールズもレントンを実の息子のように慕う。が、チャールズがゲッコーステイトを掃討する仕事を請け負っていた事から、彼の元を去る事になる。レントン父親より恋人・エウレカを選んだ。チャールズとの生活で彼の願望は一時的に充足し、そして守るべきものを見つけた事によって、彼の父親探しは「一旦」終了する。
 その後、ゲッコーステイトと合流する前に興味深いエピソードが1話挿入される。絶望病の妻と街から遠く離れた畑で暮らす孤独な男。しかし彼は何も応えない妻の看病に疲れる様子もなく、むしろ満たされた笑顔でレントンと接する。これから立ち塞がる「異なるもの」*1との付き合い方のひとつの指針を彼はレントンに暗に示した。これはレントン父親を探す子供から、父親を求められる大人になるターニングポイントでもあった。
 月光号に戻ったレントンエウレカとの関わり方に悩み、悩みつつも彼女とともに生きることを決意する。しかしエウレカのそばには常に彼女の子供たちがおり、その存在をないがしろにしてエウレカと付き合う道は自然と絶たれることになる。やがてゲッコーステイトと軍の対立は激化し、エウレカレントン、ニルバーシュに未来の活路が見出される。
 エウレカと共に旅立った地で、レントンは勝手に付いて来た子供たちと向き合う窮地に追いやられる。これまでレントンを友達か、もしくはそれより下に見下していた子供たちと付き合う度量が当初のレントンには無かった。理想の父親を求める子供から自ら父親になる過程で、彼の「父親探し」が再開される。彼は今までの父親探しの中で得た「父親像」を自分の中から模索する。その姿は非常にかっこ悪く、しかし愚直なまでに真剣だった。子供たちは反抗的で、「ママ」を奪う存在として銃を向けられさえしたが、しかしレントン父親であることを止めなかった。その姿に心を打たれ、次第にレントン父親として認めていく子供たち。サバイバル生活の末、レントンはついにアドロックと再会し、父親としての彼から巣立っていく。最終決戦、父親として成長したレントンは、父親のバトンをモーリスに託す。レントン父親探しの旅から卒業した瞬間である。
 父親を求めながら、その父親はこの世のどこにもいないと絶望寸前だったレントンを救ったのはエウレカの子供たちであり、自らが父親になることで父親の呪縛から解き放たれる物語、だったのではないでしょうか。父親からの卒業。父性がないがしろにされつつある現代日本のカウンターとしては十分に成立していたと思います。

*1:コーラリアンであるエウレカと、子供のレントンよりさらに幼いエウレカの子供たち