Angel Beats! 最終回を前に

 たった30分ですべてを奪われた。そんな理不尽、許せないじゃない


 一話のクライマックス、ガルデモのアッパーな曲をバックに繰り広げられる壮絶なバトル。重火器の嵐をものともせず、ハルバートを片手で軽くいなし、華奢な少女−天使−はひとり無言で前進する。
「理不尽」というものが眼に見えるものだとしたら、彼女のありさまがそうなのかもしれない。Angel Beats!は、そんな「理不尽」と戦う話として始まりました。
 抗いようのない圧倒的な暴力という意味の上では、ゆりっぺの眼には、天使も、彼女の愛しい弟や妹の命を奪った強盗犯も、同じ「許せない理不尽」として映ったことでしょう。
 ゆりっぺは認められない。なぜ、自分や家族の元に理不尽が降ってきたのか。だから徹底的に抗う。理不尽(天使や強盗犯)を送り込んだ神に復讐するために。
 しかし、世界の謎をひとつ、またひとつと暴いていくごとに、彼女の抗戦自体が空回っていたことも暴かれ、神にも、理不尽にさえも触れていないことに気付かされていきます。
 ゆりっぺが始めた理不尽との戦いは、戦うために創り上げた組織を維持するための戦いへと歪められていきます。SSSという組織はゆりっぺの意思を離れ、「成仏させるのがみなのため」と結論づけた音無によって踊らされる形に変容していきます。
 で、ここがまたこの作品の面白いところでもあるのですが。
 前半、作品の良心として組織のあり方や天使との戦いが本当に正しいものなのかと問い続け、静観の立場を取ってきた*1音無と、その反面、組織を思い通りに動かし、ある時には死に等しい苦痛を組織の一員に与えてきたゆりっぺの立場が中盤以降反転したように視聴者に映るという点です。
 あれだけ暴れまわっていたゆりっぺは徐々に出番を減らし、一方で音無は、第三者目線で組織を見ていた経験から、理不尽からの解放=成仏を、全ての戦線メンバーに与えるための行動を起こします。
 その間、画面から姿を消したゆりっぺは何をしていたのか。リーダーとしての役目はこなしつつも、それはいままでのような攻勢ではなく守りのための消極的な命令でしかなく、音無の行動が徐々に表立っていく中で、彼女は前半の音無のように静観の立場を取り、ただひたすら考えていたはずです。

 そもそもの前提が間違っていたのではないか、ということ。

 お前の人生だって本物だったはずだろ!


 物語中盤、天使が生徒会長の任を解かれ、その隙に暴虐の限りを尽くした直井に対し、音無が喉が裂けんばかりの声で訴えた言葉。これは直井だけでなく、ゆりっぺの心にも響いたのではないのでしょうか。
 ここでの「本物」とは、幼くして死んだ双子の兄の身代わりとして生きた直井に対する、「兄ではなく、お前自身の人生だったはずだ」という意味で発せられた言葉なのですが、ここにはもうひとつ、というより、この作品のテーマがずばり語られていると考えます。
 それは、無形な「理不尽」に異を唱えるでなく、そこまで自分が築いてきた「生」にこそ眼を向けろ、というメッセージ。
 親からの虐待にも屈せず、音楽という、自分を表現する術に邁進した岩沢。
 青春を野球に捧げた日向。
 不自由な体であってもあこがれの心を忘れず、母を思いやり続けたユイ。
 そして、最後まで幼い妹たちを守る強い姉で在り続けようとしたゆりっぺ。
 彼等は理不尽によって死後の世界に送られてきましたが、では、理不尽な目に遭ったからといって、彼等の「生」は無駄なものだったのでしょうか。
 そうではないことが、この死後の世界で、彼ら自身が証明することになります。
 その集大成が、ゆりっぺによるエンジェルプレイヤーの破壊です。神、もしくはそれに匹敵する力を拒絶する引鉄を、何故彼女が引けたのか。
 すべてを終わらせた後にゆりっぺはある感情を吐露します。

 お姉ちゃん、あんたたちと同じくらい、みんなのこと大切に思ってたんだ


 と。
 それは生前に、誰かを愛し、誰かを守りたいという強い意志と行動が無ければ生まれなかった感情です。その「生」があったからこそ、彼女はまた人を愛し、守る道を選ぶことが出来た。ゆえに、彼女は神の力を拒みます。それはゆりっぺの「生」が「理不尽」に打ち勝った瞬間でもあったのです。


 と、いうわけで。
 なぜ最終回を前に、今まで話題にしなかったくせにいきなり総括めいたさくぶんを書いたのかというと、自分の脳内を整理整頓しつつ、どこかのタイミングで「俺はAngel Beats!が好きだー」と表明しときたかったからです。
 その整理整頓に手間取って最終回直前になってしまったけど、時間ギリギリまで自分なりにまとめた、AB!のこのあたりが好きなのよというさくぶんでした。
 もうちょい補足すると、前半は音無が、後半はゆりっぺが主体に移っていくという、視点をずらすことで世界の見え方が変わる面白さも魅力の一つよね、ということも言いたいんでした。
 俺の大好きな「まなびストレート!」もそんな感じだったかな。
 あと、ここがすげーとか、ここが好みとか、まだあるんだけど、そこはどっちかというともっと趣味的なとこなんですが、そこは最終回後に書いても良さそうなので今回はこれまでに。
 では、最終回後に消えて無ければ、

 じゃあ、また会えたら会いましょう。


Angel Beats!

*1:記憶を取り戻すまでの時間稼ぎという側面もあったが