Angel Beats! 感想まとめ

 というわけで、最終回視聴後のまとめです。
 青臭さ全開なのでお気をつけください。

 前回はこのお話のあらましと結果、そしてテーマについて自分なりの解釈を述べました。
 今回は、自分がAngel Beats!の魅力の土台と考える「省略と反復による強調」と、後半は至極個人的な、自分がこの作品にはまった一因でもある「ゆりっぺという重力」について話をしようと思います。

 AB!にはひとつのお約束というか、「型」がある、というのに途中で気づいたんですね。各話のラスト→次回Aパートの流れがそれに当たります。
 まず各話のラスト。目の前の危機を脱し、ひとまずめでたし、というタイミングで、新たな危機が勃発し、さあどうなる!?と視聴者の期待を煽り、幕を引く。
 ここまでは特別なことではないのですが、そのわくわくを一週間持続して次の話を視聴すると、なぜか全員校長室*1に集っていて、いつものようにコントを繰り広げて、ズコー。
 これが顕著なのがテスト妨害回で、あのくだらない作戦からなんと天使の権威失墜という最大のミッションをクリアしてしまい沸き立つ一同*2、という描写を見せたあとに新たな勢力―直井一派―が、油断したSSSの前に立ちはだかって引き、という演出。
 視聴者としては「直井一派との壮絶な戦闘描写」を期待してしまうのが心情かと思われるし、ちょうど中盤ですから、後半へ向けて怒涛の展開へ持ち込んでも良いタイミングでもあります。
 しかしそれはなされなかった。次の話で、彼等が独房から解放されるシーンから始まるんです。抵抗したが力及ばず捕まったのか、抵抗しても無駄と判断して捕まったのか、もしくは独房でどのような扱いを受けたのか。
 そのあたりの描写はされません。
 その他にも、「直井との決着→校長室で自然に溶け込んでいる直井を交えてコント」とか、「謎の影の出現→やっぱり校長室で以下略」とか、シリーズの大半はこのような「すかし」でAパートが始まる、という構成になっています。
 VS直井戦辺りからは、バトルや葛藤の行方が決してハッピーエンドとも限らず、疑問を残したまま幕をシメるパターンも加わり、視聴者の戸惑いはさらにアップ。
 しかし、それでもなお、次回はやはりいつものアレ。
 これらは何を示しているのか。

 これは例え話ですが。

 「ダウンダウンのごっつええ感じ」という、一世を風靡したお笑い番組がありました。
 エセ外国人風の松本人志のオーダーに対しケーキ屋の主人である今田耕司がことごとくおかしなものを持って来て、松本がノリツッコミを疲弊するまでひたすら繰り返す「ミスターベーター」や文字通りアホなヒーローが脱糞したりしてアホを繰り広げながら悪と戦う「アホアホマン」などなど、さまざまな愉快な笑いを提供してきました。気がアレしたかというような高いテンションのものが多かったように思います。
 しかし、です。そこに突如、ブラックで笑いどころが読みづらい「トカゲのおっさん」という、半分トカゲなおっさんの悲哀を見せられ、「えええ……」という戸惑いの渦に視聴者を落とし込みます。これは当時、自分は大いに困惑しました。
 この、悲劇とも喜劇ともつかない「トカゲのおっさん」パートが、本作においては「お前の人生だって本物だったはずだろ!」だったり「結婚してやんよ!」に該当し、その唐突さから生まれる戸惑いを視聴者はどう処理していいのか解らずじまいで次週を迎え、やはり校長室でコント。

 各話終盤は、とにかくガツン!と来る何かを残していきます。実質的なSSSのピンチ、「このまま番組はどこへ行ってしまうんだ?」という、視聴者への追い込み。
 何があったか解らないし、何もなかったのかもしれない。理解できることもあるし、理解を超える展開もある。
 しかし、次回のAパートはとにかく和やかです。これはほぼ崩れない。前回でのキラーパスは、正面から受け止めるでなく、直井の電撃加入のような軽やかなギャグに落とし込んだり、日向のいつもの姿勢から自然と音無援護の形に収まっていたり、流れの中に溶けこませてて、これは鮮やかだなあと思うのです。
 ギャグの中にシリアスの続きを溶けこませ、かと思いきや、横合いからシリアスが殴りかかってくる。シリアス:ギャグ(or日常描写)の比率はそれほど崩れないままラストまで続きます。バトルや謎や各人のトラウマを扱うアニメで、これは稀有な例と言えます。

 ここで「ごっつ」の話に戻りますが、「トカゲのおっさん」は強烈ではあったけれども、「ごっつ」全体の雰囲気を壊すことない絶妙さを兼ね備えていました。次の週も、そのまた次の週も、やはりダウンタウンを中心としたメンバーは初っ端から愉快な笑いを提供してくれました。*3
 AB!にもそういう狙いはあったと思いますが、それだけでは足りない。AB!は連続アニメーションだから、安心感を与えすぎると、イコールマンネリにもなりかねない。強烈なショックをギリギリまで与えつつ絶妙なさじ加減で描写をカットする手法自体は変わりませんでしたが、カットするタイミングが徐々に変わっていき、描かれてこなかったものが描かれるようになります。
 それは何か。前回の記事でも触れた、「本当は何と向き合うべきか」というこの物語の根幹です。
 それによって、いつもの戻るべき日常の風景が少しずつ変わっていき、「卒業」に向けての準備が始まります。

 話が前後しますが。
 血生臭い展開のその後、生前の理不尽の解消後、もしくはあったかどうかわからない戦闘シーンの数々をばっさりカットして、それでもなお校長室コントを繰り広げてきた意味。
 その意味は二つあった、と私は考えます。
 悲劇があってもなくても、みんなが帰ってくる場所はここなんだ、という強調。すなわち「仲間とはこういう事」というのを同じようなシーンの反復だけで示している、ということ。
 もうひとつは、「その仲間の中には視聴者の皆さんも入っていますよ」というメッセージ。……これはちょっとメルヘンすぎる解釈ですが、いいトシこいて。最初は戸惑いを覚えていた省略と反復も、回を重ねることに安心につながっていったんですね。
 「ああ、またここに帰ってこれたんだ」っていう。
 これは幸せな体験でした。
 自分もまあ一週間の中でつらいことも幸せなことも積んでいく。架空のキャラである彼等も、自分の知らないところ*4で、やはり苦闘している。自分よりずっと大変な目に遭ってたんだろうし、その分、自分が味わえないような幸福も得ただろう。
 自分の実在する生活と、架空のキャラの、しかも描かれてさえ居ないエアポケットを重ねるのはさすがにドリーミーが過ぎると自覚はしていますが、しかし、もうそれで良かったんです。
 この時間は長くは続かないと、作品自体が教えてくれていましたから。そこはもう書きましたね。

 私の卒業は作品から、そしてとあるキャラからの卒業も兼ねていました。愛すべき隣人、ゆりっぺにさよならを。
 自分はゆりっぺに感情移入してしまったので、主役である音無ではなく、ずっとゆりっぺを追って視聴していました。
 ゆりっぺというキャタクターは、「弟や妹を30分で殺されてしまった」だとか「その理不尽に抗うために神に復讐する」だとか、とにかく装飾が派手なのですが、「喪失感からの代償行為」と考えると、誰しも何かしら覚えのあるものに見えてくる気がしるんですね。
 例えば、大切ななにか*5を失って、必要以上に仕事や趣味に没頭するとか。
 部署や部活やサークルやらの行く末を思案し、不安視する役目は自分一人に押し付けられていて、その重圧に耐えるために自分を大きく見せたりいばり倒したり。しかし実際は押し付けられていると「錯覚」しているもので。*6そういう時期が、私にもありました。
 でもそれっていつかどこかで破綻しちゃうことが多くて、結局は喪失と対峙しなきゃいけないことに気付くことになるんだと思います。
 ゆりっぺも、初めに立てた、思い込みに近い仮定(天使の正体とかもろもろ)がことごとく破綻していたことが露呈していって、物語的にどんどん追い詰められていく。*7
 しかし最後には、前述した「反復」によって弟や妹の喪失と向き合うことができて、自分の生を受け入れて、大切なものを見つける。この大切なものについては前回も書きましたね。
 それでもう、それまで怖くて硬かった表情から一変、やたら乙女っぽい無防備なゆりっぺを見て、こちらも素直に喜べた、ということです。
 そこで、私もゆりっぺの自縛から解かれ、「成仏」することが出来ました。AB!という楽園から解き放たれ、次に向かう勇気を得ることが出来たのです。
 と書くと、うわ、宗教っぺえ、と自分でも気持ち悪さを感じましたが、翻れば、貴重な睡眠時間の獲得と肥大妄想からの脱出に成功したとも言えるわけで、幸せだったけれども、結構疲弊したよ、この3ヶ月!
 ゆりっぺの成仏がなけりゃあ、エヴァに囚われて道を踏み外したあの頃に戻りかねんかった……。
 アニメは楽しい。でも、行き過ぎ、良くない。つくづく、アニオタを続けるって諸刃の剣。


 補足、もしくは蛇足
 いやあ、自己投影とかキモイことは捨て去るとしても、ゆりっぺかわいいですよね。答えは聞いてない。
 ナマイキだろう、で、もうすげえひどいやつでさあ、どこまでギャグでやっててどこまでマジで追い詰めてんのかわからんところがすごいゾクゾクする!*8
 そのあたりのスレスレ感は多分、見た目も含め、ハルヒ属性に分けられるんだろうけど、この人を超える後続はこのあと現れないような気がする。 
 そしてそれとは別として、かなでちゃんを振り回してるつもりがいつの間にか天然キャラのかなでちゃんにやり返されているゆりっぺ話がみたいです。誰か!

 補足2
「で、お前は何と向き合ったの?」についてはツッコミ厳禁。

Angel Beats!

*1:もしくはそれに該当する安全な場所。保健室とかね

*2:ここでゆりっぺと音無だけが苦悩している、というのもポイントだけど、それはまた別の話

*3:余談ですが、AB!ブルーレイ1巻のキャラコメンタリでもろ「ゴレンジャイ」みたいなコントもやってるし、スタッフの中に「ごっつ」好きな人が居るのかなあと思いました。

*4:「省略」の部分ね

*5:家族やペットや美少女フィギュアや、大切なものは人それぞれで、喪失の大きさもそれぞれだけど

*6:劇中でも実際、音無があれこれ疑問を投げかけていたし、日向だってフォローしようとしていた、と思う。野田だって、あれはあれで、多分支えてるつもりだったはずで。多分……

*7:ゆりっぺと自分を重ねすぎて単なる自分が好きな人に見られそうですが、続けます

*8:マゾなんですねこれ書いてるひと