長官「みな、集まったな。日々の訓練ご苦労」
純「えへへ、それほどでも」
葵「ほんとにそれほど訓練してないので何とも言えないです……」
長官「ここまではまだ序の口。相撲で言えば前頭三枚目くらいだ」
葵「序の口じゃないんですか……。もう幕内なんですか……ちょろいな地球防衛……」
長官「そこでだ。諸君らには本日から本格的な特訓に入ってもらう」
みどり「そ、それってまさか」
長官「そう。エクスメイデンの操縦訓練だ」
葵「くっ、ついにこの時が来たか……。ゴクリ」
ジル「よーし、どかんどかん動かすぞ!」
長官「うむ、その意気だ。では、みなこれを」
サッ
純「ん?」
ジル「これって……。ゲーム機のコントローラー?」
みどり「一体なんです?」
ジル「全員違うやつだー。わたしのボタンふたつだけ?」
純「え、あたしのボタンなんかいっぱいなんだけど。なんかいっぱいなんだけど!」
葵「いや数の問題じゃねえよ!これで何をしろって言うんです!?」
長官「イメージトレーニングだー」
葵「ああ……。またそれ系か……ぐったり来るわ……」
長官「おいー。しっかりしろー。イメージトレーニング大事だぞー。本番で指くじいたらどうするー」
葵「え、ロボ操縦のリスクってそんくらいなんすか……?」
純「うわ、指つった!左上の押せない!」
葵「お前マジか……」
長官「ほれみろー。これで分かっただろう、諸君らの使命の重さが」
みどり「意外と軽いのは分かりました」
長官「よし、それではふたり一組になってくれ。片方がフェロウ役、もう片方が操縦者を演じ、模擬戦を行う」
葵「うっわローテク」
みどり「役?」
長官「頭の中で戦っている自分を想像するんだ。まあ組み手だ。頭を柔らかくなー」
ジル「みどりちゃん、わたしと組もう!」
みどり「ええんやでー」
葵「相変わらず馴染まないな、関西弁。じゃあ私は純とか……」
純「あたしフェロウやる!」
葵「といっても……。このリモコンで何をどうすれば……」
長官「キーの上で前進、Aボタンでパンチとかでいいだろう」
葵「『とか』って……。いやもう早く終わらせよう。来い、純!」
純「はいドーン!!」
ブンッ
葵「うわあ!?何すんだお前ー!?」
純「右ストレートですけど」
葵「フリでいいんだよフリで!今のマジパンチだろ!」
みどり「あのー、そもそもフェロウって腕とかあるんですか?」
長官「あったりなかったりだ」
葵「ええー……」
長官「想像で補えー」
葵「マジックワードだな、想像力……」
ジル「よおし、行くよみどりちゃん!エクスゥゥゥ、ビィィィィム!!」
みどり「きゃあーやーらーれーたー」
葵「あ、必殺技叫ぶ系なんだ?」
長官「昭和だからなー」
葵「もう突っ込みませんからね」
30分経過
みどり「はあっ、はあっ……」
葵「大丈夫かみどり」
みどり「これ、フェロウ役、しんどくないですか……?」
葵「ロボ側はビームとか出しとけばなんか迎撃できるみたいだからな……」
純「葵ちゃん、替わって……」
葵「やだよ、めんどい」
純「ちょっと司令ー、フェロウはビーム出せないんですか?不公平だ!格差社会!」
長官「そう。だから世の中から争いが消えないんだ。しかし、君たち選ばれた操縦者こそ、この不毛な争いに終止符を打つ最後の切り札なのだ!」
純「おお、なんかかっこいい!あたしがんばるよ!」
葵「うん、がんばれよ。フェロウ役をな」
純「あっ」
この世にフェロウはびこる限り、彼女たちの戦いは終わらない。ゆけ、エクスメイデン。想像力のつきるまで――。