ポピパとは、眩しさ、かな。……恥ずかしい。自分の知らなかった輝き、今からでは手に入りそうに無いと諦めていたもの。
印象深いのはおたえ攻略会議。あいつ神出鬼没過ぎ。おたえの彼氏発言の辺りとかさ。なんのこたあない、しょーもない話で転がりながら笑いあえる。そういうものの輝きに初めて触れた気がする。
それまでは正直、それほど身は入ってなかった。でも今考えたら、引っ掛かったところはいくつもあった。
こんな話を聞いた。おたえと香澄の夕暮れのギターレッスンとかさ、……まああれむかつくけど、先生が咎めず無言で去っていったらしい。わかるよ。むかついたけど。あのときにしかない、かけがえのない時間が夕日に照らされている。つたない旋律が言葉より多くのものを語っていた、ってとこか。クサいけどな。
で、おたえがクライブに参加するだろ、ごく自然に。香澄の妹だけが、は? ってなるやつ。なるよなふつう。
おたえドキドキ作戦におたえが参加してはいけないとは言ってないってか。とんちか。
まあ多分、ミッションはクライブ前に達成してたんだろうね。香澄がさ、地味な練習をあんなに楽しそうにするの見てきたんだもの。なんか、うずくよな、香澄のああいうところ。りみもきっとそうだったんだろ。
りみは舞台に上がってから変わったよな。文化祭の出し物の提案とか、出来る子じゃなかったろ。一度火が点いたらぐいぐい行くやつとは、意外だった……。あんなに香澄に迫られて逃げ続けた子がさ。それからは要所要所でバンドが行き詰まったら空気を変えようとしたのはりみが一番多いんじゃないかな。最後のオーディションではチョココロネがーって、おどけて見せてた。演奏のミスをフォローしてくれたのもりみだったな。
おたえの話に戻ると、おたえのやりたいようにやる姿は、オーナーの言っていた「音楽なんて好きなやつが好きなようにやる」の体現だったように思えるな、今では。
香澄もそういうことが出来る素質のあるやつだったんだろうけど、シャクだけどな。好きなことを好きなようにやるためには、今自分に足りないものに自覚的かどうかってのも含まれてんだろうね。はじめてのオーディションでは、香澄だけが無自覚だった。だから、「お前が一番足りなかった」なのかもしれない。
沙綾はその逆でさ、好きなことをやるってことに罪悪感を覚えてしまっている。前のバンドメンバー達に悪いところはなにもなかった。ただ、沙綾は応えられなかった。徐々に意識のずれが明確になった。誰も悪くない。ひとつ言えるのは、香澄は、沙綾がいなくて大変とは言わなかった。いなくても大丈夫って言ったんだよあいつ。ビーンボール気味だぞそれ。そうやって、あいつは最後まで急かさなかった。いつでも来ていいと扉を開けっ広げにしてきた。だから来れたのかもな。まあ家族や前のメンバーのフォローのたまものだけどな。
香澄の声が出なくなったのには驚いた。あいつにもプレッシャーっての、あったのな。まあ、そういうこともあるよ。みんなでボーカルを分担するって言うのは良いアイディアだった。なんか、距離が近づいた、ような気がする。ラーメン、おいしかったよな。
最後のオーディションは、ミスもあったけどやりきったと言い切れるものだった。オーナーは言葉足らずなんだよな、ったく。でも、なんとかなった。それからは怒涛の毎日。
スペースでは最初で最後のライヴ。演奏してて気づいたことがあった。これから本格的な夏が来る。夏が来たら、もっとバンドがやりたい。そう、ここから始まるって予感がするんだ。
しゃあねえから、もう少し付き合ってやるよ。ランダムスター、もう雑に扱うなよ。あ、ケースから出すなー!