じゅじゅるさん。2

じゅじゅるのへたれ感想ブログ

ストーリー型OPのすすめ

アニメのOPには様々な役割があります。
作品の世界観の提示。
いつの時代で、どこを舞台としているのか。
魅力ある登場人物たちの紹介。
登場人物の交差する想い、そして、彼、彼女らは何を目的とし、どのようにして物語は紡がれていくのか。
OPは作品の紹介の場であり、本編への案内役をこなします。
1分30秒に、これほどかと言わんばかりに情報が詰められるのです。

今回は、そんなOPの中でもちょっと変わり種である「ストーリー型OP」を紹介していきたいと思います。

これは私の造語なのですが、簡単な定義としては一本のストーリーで形成されていて、劇中のいちエピソードを1分30秒に凝縮したような形といいましょうか。
ストーリー型OPの利点としては、臨場感、没入感に秀で、ゴージャスな短編を見た気分を味わえるという効果が挙げられます。
が、一方で、1分30秒前後の短い時間に一本筋のストーリーを挿入すると、作品紹介・本編への導入としての本来の役割を果たす時間が目減りしてしまいます。
そこがまた創意工夫のしがいのあるところでしょう。



ストーリー型OPは非常に短い時間に物語を詰め込む為、登場人物を絞り込む傾向があります。
代表的な例をひとつ挙げます。
シティーハンター3のOPです。

シティーハンターのシリーズ第三弾に当たる今作のOPは、主人公の冴羽リョウと相棒の槇村香のふたりのみが登場。
ストーリーはなんらかのトラブルでヘリに追われた香がリョウの事務所兼寝床に飛び込み、リョウが銃弾の嵐に立ち向かいコルトバイソンでヘリを一撃の下に打ち落とす、という単純明快な筋書きです。
海坊主や冴子などの魅力的なキャラクター、シティーハンターを構成するいくつかの主要素*1は全く登場しません。
香の見事な体裁き、新宿の闇夜を引き裂くアパッチの異様さが見るものを惹きつけます。そして主人公・リョウの渾身の一撃。スカッとしますね。
バトワイザーからアパッチの挙動まで、徹底的にディティールにこだわりまくることで、スイーパーという主人公達の特殊な身の上がストレートに伝わる作りになっています。
作品本編の根幹であるふたりのスイーパーの日常と非日常を描く事「だけ」に全ての時間が捧げられ、必要最低限の要素で物語の魅力を存分に引き出すことに成功しているのです。
終盤のヘリとの一騎打ちもそうですが、序盤のリョウの健康に悪そうな私生活さえ子ども心にかっこ良く憧れたものです。大人になったら私もバトワイザー飲むもんだと思ってた。



もう少し例を挙げます。
OVA「Burn Up W」のOPから。


こちらは3話バージョン。
やましたともなりのクレジットの入った漫画表紙がおしゃれですね。
コミック調に描かれる、近未来ポリスな主人公とギャングのコミカル追跡劇は、これから始まる物語への期待度をぐんと引き上げています。
数多いキャラをさばきながら、事件発生から解決まで詰め込まれたボリューミーさを軽快なタッチで描き切っている秀作です。
軽快なカーアクションにも目を奪われてしまいます。
漫画的な効果音描写なども世界観にマッチしていますね。



戦場のヴァルキュリア後期OPもおすすめの一作。

梅津泰臣さん演出・コンテで描かれる、大迫力のガリアVS帝国軍による市街地戦。
一度の戦闘をみっちり描ききっているので、このまま本編に流用できそう。
第7小隊の主戦力として活躍するエーデルワイス号の砲撃に対する各人のリアクションに性格が現れていて、梅津さんの職人気質を感じます。
主にガリア兵の活躍が中心ですが、戦況が激化していくと、後半はヴァルキュリア人の超絶バトルに移行していきます。
「常識の範囲内の」激しい市街戦からの、人知を超えた超人バトルへのインフレっぷりに見ていて気持ちが昂ります。
ヴァルキュリア人の力を解放したセルベリアの一撃によってなぎ倒される戦車群、積み木のように崩れていく建造物、見応えのある爆発エフェクトにも注目。
二番目のOPということもあって部隊内での人間関係などの細かいことは省く事が可能になり、軍と軍のシンプルな対立構造に注力した結果、実に見応えのあるアクション大作に仕上がりました。



明日のナージャ、こちらも傑作OPです。細田守さんが演出を担当されています。

1分30秒というこの限られた時間内で「ナージャ・アップルフィールドの旅」を描き切る手腕!
基本的に右から左へ駈けて抜けていくOPはストーリー型OPという認識です(スタードライバーとかね)。
ナージャの元気さから、シームレスに彼女のもうひとつのしなやかな魅力へと繋げていくところに胸躍るものを覚えます。
サビのダンスパートからの時間的・物理的な跳躍が大胆かつ軽妙です。
映像のリズムの変調がとても見事で、感情を揺り動かしにかかってきます。
旅には山や谷があって、出会いや別れを繰り返す。時には気分が沈む日もあるけど前を向いて歩こう。
本田美奈子.さんの歌う主題歌「ナージャ!!」がかなり的確に本作を捉えていて、それに十二分に応える、力のある映像になっています。
幼いナージャが扉を開き、やがてレディへと成長して行く様をお見逃しのないよう。



しまじろうのわお!です。初めて見たときの私のツイートを引用します。

地球が生まれ、育っていくまでの壮大さと軽快さ。気持ちいいですねえ。これをしまじろうでやろうっていうのも粋じゃないですか。子ども達の感受性を信じている。
非常にテクニカルで、ユニークです。そして、どこか優しい。子ども達の心にも残るものがあったんじゃないでしょうか。


物語世界の入場門。OPには他にも様々な趣向をこしらえた傑作が沢山揃っています。
私は今回、ストーリー型OPに注目して記事を書きましたが、王道の紹介型OP、ストーリーや作品世界を抽象的に描いたPV型OPなど、素敵なOPは紹介しきれないほどあります。
あなただけの、あなただけが見つけた素晴らしいOPがあれば、是非ご紹介ください。
たくさんのOPが、あなたが扉を開いてくれるのを待っています。
そして一緒に本編の海に飛び込みましょう。
アニメのさらなる発見の旅はまだまだ続きます。

*1:新宿駅掲示板やゲスト美女、もっこりなどのコメディ要素