じゅじゅるさん。2

じゅじゅるのへたれ感想ブログ

市ヶ谷有咲の変化と愛しさと切なさと心強さと


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みなさん、バンドリ! ガールズバンドパーティ!やってますか! 僕は結構やってます! こないだ有咲の衣装全コンプしました! 彼女こそ天使かつエンジェルです。

 徐々にコンテンツが増え、ゲームの楽しみ方にバリエーションが増えてきてかなり熱いです。

イベントなどで他バンドとの関係性が変化していくのに合わせてライブ中の掛け合いの種類が増えていくのがたまらなく嬉しいのです。粋な演出だよね。

 

ライブでの掛け合いで初期からもっとも変化の激しい子のひとりに市ヶ谷有咲さんがいます。

彼女は初期こそ仮面優等生を貫こうとしますが、他バンドとの交流で徐々に素が出せるようになっていきます。奥沢さんに同志のような感覚で接したり、千聖さんともなんとなく会話ができるようになったり。花音先輩はかわいい先輩。

 

そうして徐々に「やまとなでしこ」の仮面を被る機会を失い、自然体でいられる時間が増えたこと、大変心強く、感慨深いです。

人との交流を避けてきた彼女に気の許せる相手が増えた。とても喜ばしいことです。

 

でもちょっと一瞬思ってしまう。
わ、わかりました! とか、う、うん、なんて煮えきらない返答をして来たライブ中の彼女は、これからすべてのバンドメンバーとの関わりが出来たとき、お目見えすることがなくなってしまうのではないか。

 

どうしようもなく、人と壁を作ってしまう有咲さんが私は好きです。その不器用さ、あと一歩を踏み出せない弱さがいとおしい。
でもこのままが良いはずはなく、彼女は臆病なこころに火を点けて変わろうとしている。そんな彼女をこそ待ち望んでいた自分もいます。矛盾しているんです。

 

ガルパのキャラは変化を恐れません。ハロハピのメンバーとしての自覚と誇りを持ちはじめた奥沢美咲、自分だけの音楽を探しはじめた氷川紗夜……。そして、自分が変わるということは周囲の人との関わり方も変わっていくということでもあります。

 

今、ガルパのメンバーたちは、そういう新しい自分の模索、今までと違う関係を構築している最中です。ある意味、一番美味しい時期かもしれない。
彼女たちの世界は広がっていく。それは大変望ましいことだ。

しかし、一方でこうも感じます。あの初々しく、何かにぶつかり続けていたあの眩しい季節を、私はもう見ることはないのだろうか、と。

 

これから市ヶ谷有咲と出会うプレイヤーは、過去ストの中でしか昔の有咲を見ることがなくなるんだろうな……。
私は初期から有咲が好きです。彼女の成長を喜びたいと思う反面、どんどん人の影に頼らず表に出るようになった強い有咲に、一抹の寂しさを覚える。
「有咲はいつまでもそのままで良いのに」という傲慢さが私に付きまとう。

 

でも、そんなこと気にしなくて良いんだ。彼女の笑顔を見る機会が多くなった。それは何よりも私を嬉しくさせる。

 

これからイベストやメインストーリーが進行するに従い、彼女達は恐れず変わっていく。そうして、出来ることが増えていき、彼女達のパワーがアプリを変えていく。

 

 

一抹の寂しさを胸に、私は彼女の背を見失わない。有咲よ、戸惑いながら行こう。すぐに追い付くから……。

バンドリ再再再放送!チキチキ!ポピパあのふたりのこのシーンが熱い3選!

10月17日深夜24:00からBSフジにてバンドリの再再再放送が始まります!
まだご覧になっていない方、何度も見すぎて星の鼓動が聞こえるようになった方、みんなに見てもらいたい!
アニメ「バンドリ!」はポピパ5人の物語ですが、今回は5人の時では見られない、一対一だからこそ見える風景について書きたいと思います。

 

#4「怒っちゃった!」より、夕暮れの教室にてギター練習する香澄とたえ
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シチュエーションの勝利。

ふたりだけの秘密の放課後を夕日だけが見てる。今この時、世界にはふたりだけ。手前の空間を広く取ったレイアウトも、世界の孤独と神聖さを強調しています。

注意しようと入りかけた先生がそっと去るくだりなんか、最優秀助演賞ものですよね。

 

 

#6「作っちゃった!」より、学校の踊り場でバンド名を考える有咲と話しかける沙綾
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目立つのが苦手な有咲が階段の踊り場で座り込んで熟慮しているのは、学園祭で浮かれる教室に居づらくなったからなんでしょうね。沙綾の距離の詰めかたが絶妙で、精神年齢の高さを感じますね。言葉を畳み掛けないで、適度に沈黙を挟みながら相手にリズムを合わせる。さすがポピパのお母さんだ。なんだかんだ言ってバンドの名前を考えてる有咲はほんとにかわいいなあ。

 

 

#6「作っちゃった!」から、いつのまにか仲良くなってるたえとりみの異次元会話
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たえ「今夜はすき焼きだよ」

りみ「すき焼き、誕生日なの?」

たえ「違うよ? 行こ」

りみ「えっ? うん」

 この短い会話に至るまでの前提がわからんのでとんちきに感じますが、ツイッターで見かけた二次創作漫画で「今夜はすき焼きだよ」は、たえがりみりんを夕飯に誘う際の決まり文句である(そしてりみはそれに気づかない)という解釈がなされており、それを見て以来、自分のなかではめっちゃ萌えるシーンとなっております。(のちの話でりみは何度かおたえの家にお邪魔していることが明かされる)

この娘ら、ふたりきりだといつもボケ倒してるんだろうなあ……。それで支障無いんだから波長が合うって事なんでしょうね。
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これに関連して、#5の牛込姉妹の会話もどちゃくちゃかわいいのでおすすめしておきたい。「(おたえと)もっと早く喋れば良かったなあ」と明るい調子で言うりみに対するお姉ちゃんの「ぜんぜん遅くないよー」ていうあっけらかんとした返し。りみりんの実感のこもった台詞の調子が良いんですよお。姉妹の仲のよさがたまんないす。

 

……4つになったな。

 

 

メインストーリーの表と裏で、静かに、しかし確かに縮まっていく彼女らの距離に想いを馳せるのも一興。頻繁に再放送があるとまた新しい側面を見つけたり、まだまだ飽きませんね。

 

BanG Dream! 4th☆LIVE 日本武道館ライブビューイングレポ

バンドリ日本武道館公演のライブビューイングを見てきました。

LVははじめての経験で色々戸惑ったんですが、周りの人達にも恵まれてにぎにぎしく観劇できました。カメラワークがとても秀逸で、ポピパのみんなのパフォーマンスをたっぷり堪能しました。

セトリなどレポートはこちらが詳しいです。

www.edgeline-tokyo.com

 

  • 自分応援歌からみんな応援歌へ

ポピパの楽曲は「ときめきエクスペリエンス!」「前へススメ!」に代表されるような、自分を奮い立たせる「自分応援歌」の色合いが強い印象です。慣れないバンド演奏という困難に立ち向かう彼女たちのために、彼女たちの映し鏡として曲が作られてきたように思います。その集大成の意味合いの強い武道館ライブで「自分応援歌」が「みんな応援歌」に昇華されるさまを私たちは目撃しました。どんなに雨風が強かろうが武道館ライブにまで辿り着いた彼女たちが見せつけた力強いパフォーマンスは前に進み続けた成果そのもので、見る者に勇気を与えました。新曲「Time Lapes」で見せた愛美さんの天に掲げる拳は彼女が積み重ねた努力のあらわれのようで、大変心強いものでした。

大塚紗英さんのギターは堂に入ったもので、西本りみさんのベースはバンドを支え、大橋彩香さんのドラムはダイナミックで、伊藤彩沙さんのキーボードはサウンドに彩りを与えていました。確かなものになりつつある彼女達のパフォーマンスが見る者を魅了していました。

ステージ演出も見応えがあり、アニメOP「ときめきエクスペリエンス!」を再現した360°回転するステージ、「Time Lapes」の大人のロックな雰囲気に合わせたスモーク、ステージを覆う落下式モニターなど、大変迫力がありました。アコースティックコーナーでのしっとりした雰囲気作り、VTRからの「光るなら」演奏へのスムーズ進行etc……。

そんな豪華演出に負けない、ポピパのパフォーマンス。演奏もさることながら、チョココロネジャンプやぴょんぴょん飛び跳ねるあやさのかわいいことかわいいこと。耳にも目にも嬉しい。

 

  • ずっと見ていたいさえチ

中でもストリートライブの経験があるさえチの華のある演奏は大変美しく、どの瞬間を切り取っても画になる人なんだなあ、と。ギターを構える角度からしてキマっている。そんな彼女が演奏以外でみせるおとぼけもまさに「おたえ」でした。

アニメ再現コーナーの蔵イブパートでギターを置き忘れて舞台に顔を出すさまなどまさにおたえ。

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「忘れちゃった」じゃねー!(有咲風に)なんでそんな落ち着いてるの……。

演奏以外だととたんにゆるくなるさえチ、最高です。

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 一体さえチは何を見たんだ……。最後の記念撮影中、みんなが「ぶどうのポーズ(武道館の屋根のアレ)」をしている中で謎のファイティングポーズを取っているのもなんか愉快でした。ピックを投げたり投げキッスするさまなど、一挙手一投足がとにかくかっこ良かったり、なんとも奥深い方です。CMで宣言してた歯ギターもやってたよ!!

 

  • あやさの思い入れの強さ

締めの挨拶の時、あいみんが大変自分を卑下して「リーダーらしいこと何も出来なくて」と告白すると、

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 感情が爆発し号泣するあやさ。あいみんのこと、ずっと見ていたんだね。

あやさのポピパに対する思い入れの強さは随所に現れていて、アニメの香澄並に抱きついたり、感情を素直に出す方なんだな、という印象を強く持ちました。

 

  • あいみんの強さと弱さ

ライブ中、ボーカリストとしてリーダーとして立派にバンドを率いたあいみんでしたが、そんな彼女の弱さが最後の挨拶で露呈します。ライブ中一切見せなかった弱気な彼女が顔を出します。初期の香澄はアニメやガルパでみせる奔放なイメージとは程遠く、とても自信なさげな所体で、あいみんはその頃の香澄に親近感を覚えていたそうです。今の香澄は自由人に見えるけど、アニメで見せたように弱気に捕われる一面も残っている。キャラが声優に寄ったのか、声優にキャラが寄ったのか。その境目が分からなくなる位、彼女は香澄なんだな、と実感した一幕でありました。

 

  • キュートりみりん

告知コーナーで二度も「ガルパーティ!in大阪」を「東京」と言い間違えてしまい「大阪を捨てた!」といじられるりみりんかわいい。演奏中は仕事人っぽく着実に音を刻む彼女も、喋り出すととてもキュートな方でした。

 

  • みんなのお姉さん、はっしー

最後の挨拶でりみりんが泣き出す最中、そっとはけてタオルを持ってきてくれるはっしー。劇中通りのお姉さんポジで、とても頼りになる存在でした。演奏中もそうでない時もいつもみんなを見守るドラマーな彼女ですが、360°回る舞台に腰掛けた時の足の放り投げ方など、自然体の姿も魅力的でした。

 

 時間いっぱい、大変楽しい時間をもらいました。

VTR以外ゲストもおらず、ポピパのメンバーだけで武道館をやりきった彼女たちに拍手を送りたいです。ポピパはこれからも前へ進んでいくでしょう。その姿をまた目撃するために僕もがんばろう。本当にありがとうございました。

 

バンドリ再々放送!今こそ見てほしい!山吹沙綾のすすめ

 今年1月に始まったアニメバンドリ、なんと本日からBS11をはじめ、各地で再々放送がはじまります。
 アニメから始まり、スマホゲーに課金して不思議の国のアリサを愛でる毎日を送っておりますが、その想いをブログにしたためることを怠ってきたことを悔いております。
 再々放送がはじまるこのタイミング、逃してはならない!僕がアニメバンドリでぐっと来た山吹沙綾という娘について綴りたいと思います。


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 あのとき、沙綾は何を思ったか。複数回見ていると、彼女が見せる一瞬の表情も見逃せなくなります。
 悲しいことに、沙綾は自分のグループ内での立ち位置に自覚的な子です。友達やクラスメイトと過ごすとき、彼女は自身を何かあったときのための備えと規定するクセがあります。

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 舞台に釘付けになるバンドのメンツからすこし離れて全体を見回すポジショニングをする。こういうことを自然にしてしまうのが彼女です。

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 文化祭で実行委員のサポートとして副委員を任される場面では、彼女の周りも彼女をサポーターとして認識していることが分かります。
 サポートとして求められてるポジションを自然とこなしてしまう。それは体の弱い母の代わりを長年勤めてきた経験から来ているのでしょう。
 そういった、周りからの求めに従って過ごしてきた沙綾が選んだ道を、彼女の表情や仕草から辿ってみてください。また違う景色が映るでしょう。

 アニメの1話で香澄の高校での初の友達として登場し、第8話で走り出すまで、沙綾はどんな想いを抱えて過ごしてきたのでしょう。
 再々放送では、例えばそういうことに注目して見て欲しいです。

アニメ「ケロロ軍曹」のおどろきパロディ3選

アニメ「ケロロ軍曹」には様々なパロディが織り込まれています。
その中から、個人的に「これはすごいリスペクトだ」と感じたパロディをみっつご紹介します。

 

 

・アニメ版デスノート最終回
第185話「ロボボ 機械化大作戦 であります/タママ ノートですぅ であります」(アニメ第185話 Bパート)
DEATH NOTE 最終回より


その精緻な絵柄とキレのあるセリフなどで、のちの漫画やアニメに大量のパロディを生んだことでも知られる「デスノート」。
本エピソードはまるまるデスノートパロディで構成されています。デスノート的アイテムを拾ったタママが暴走した結果、月くん的な最期を迎えるまでを半パートで描いています。
本エピソードのパロディが他のデスノパロディと一線を画しているのはアニメ版最終回をパロってきた点にあります。
アニメ版デスノートは原作のラストとは異なる、銃弾を受けて逃げ惑う孤独な月くんの姿はあまりに憐れで、そのアニメオリジナルの解釈に対し批判もあり、一方で絶賛もありました。波頭の夕暮れが、青春を賭けた歪んだ情熱の放つ最期の輝きとなり彼に降り注がれ、色濃く影を作ります。アニメ制作陣の、原作への迸るリスペクト溢れる名シーンだと僕は思います。

印象的なシーンなのですが、賛否あるラストシーンの改変とあって、パロるには勇気のいるシーンでもあったかと思います。
しかし、元ネタを知らない人にも、ひとつかみの哀愁を漂わせるタママの末路に、アニメデスノートが最後に魅せた熱量は伝わったんじゃないでしょうか。それほどに力の入ったパロディです。煙突のてっぺんでタママを見下ろしながらカレーを怪しくむさぼるクルルが芸コマです。

 


ナウシカ王蟲と破片
226話「冬樹 遠い海から来たカメ であります」
映画・風の谷のナウシカより


「薙ぎ払え!」や火の七日間等、パロディされた例は数知れず。不朽の名作「風の谷のナウシカ」のパロディです。
今回は、風の谷のナウシカの前半部分の見せ場のひとつ、暴走王蟲を鎮めるため、単身メーヴェを駆るナウシカのパロディです。

このシーンは、ユパさまに迫り、追い越すメーヴェが反転し、木々を粉々に凪ぎ払いながら王蟲メーヴェに肉薄する描写をワンカットでおさめた大変重たいカット。特に、ひとつひとつ描き込まれバラバラに飛び散る破片の物量に驚かされます。

これをケロロ軍曹は完コピしてしまうのです。テレビアニメの枠内で!

上記の比較画像からもそのとんでもなさは伺えます。原典への敬意。パロディはこうだ!と叫んでいるかのような、ケロロ軍曹スタッフ渾身の回答。

是非堪能していただきたい。

 

 

・宇宙渡辺久美子
第66話「ギロロ 愛の救出大作戦 であります/夏美&小雪 ドッキドッキ初デート であります」(アニメ第66話 Aパート)

……これはアニメパロ、というか人物パロというか。変化球です。
アニメ版「ケロロ軍曹」において切っても切れない存在のひとつに「機動戦士ガンダム」が挙げられます。
軍曹がガンダム好きなのはもちろん、劇中で登場するガンプラの数々にニヤリとしたガンダムファンは少なくないはず。
ガンダムパロディはケロロ軍曹はもとより、様々な作品でお目見えすることが多いのですが、そんな中、ケロロ軍曹でないと難しそうなパロディがこちら、「宇宙渡辺久美子」です。
渡辺久美子さんは本作の主人公・ケロロ軍曹の声優さんであり、且つ、「機動戦士Vガンダム」で個性的なヒロインとして印象の強いカテジナ・ルースの声をあてた方でもあります。
両作品のファンならば、いつVガンダムパロディが飛び出すかやきもきしていたことでしょう。僕もそう。
ケロロ軍曹のレギュラー陣は名作アニメに関わった人も多く、例えば草尾毅さんにスラムダンクネタが振られる事も。
そんな伏線?があり、シリーズも二年目に突入。ファンからの熱いエールが最高潮に達した頃に繰り出されたパロディが「中の人の宇宙人バージョンの登場」という超変化球。
大興奮の軍曹(CV:渡辺久美子さん)を尻目に、サッとサインを書き、名台詞「冬が来るとわけもなく悲しくなりません?」を残して颯爽と去っていく宇宙渡辺久美子(CV:渡辺久美子さん)。
渡辺久美子にサインをする渡辺久美子……。自分でも何を言っているかさっぱりわかりませんが、このような異次元パロディが成立するのもケロロ軍曹の強みでしょう。

 

 

原典へのリスペクトを元に、あの名作のあの名シーンが見事に再構築された姿を目撃したとき、私の胸に去来する懐かしさ、そして新しい驚き。私の好きだったアニメがあの頃とはまた違う形で世に問われたとき、去来する戸惑いとともに、新しい風を感じてみたい。そんな風に思うのでした。

BanGDream! バンドリ感想SS風 〜少女Aの独白〜

 ポピパとは、眩しさ、かな。……恥ずかしい。自分の知らなかった輝き、今からでは手に入りそうに無いと諦めていたもの。



 印象深いのはおたえ攻略会議。あいつ神出鬼没過ぎ。おたえの彼氏発言の辺りとかさ。なんのこたあない、しょーもない話で転がりながら笑いあえる。そういうものの輝きに初めて触れた気がする。


 それまでは正直、それほど身は入ってなかった。でも今考えたら、引っ掛かったところはいくつもあった。


 こんな話を聞いた。おたえと香澄の夕暮れのギターレッスンとかさ、……まああれむかつくけど、先生が咎めず無言で去っていったらしい。わかるよ。むかついたけど。あのときにしかない、かけがえのない時間が夕日に照らされている。つたない旋律が言葉より多くのものを語っていた、ってとこか。クサいけどな。


 で、おたえがクライブに参加するだろ、ごく自然に。香澄の妹だけが、は? ってなるやつ。なるよなふつう。
 おたえドキドキ作戦におたえが参加してはいけないとは言ってないってか。とんちか。
 まあ多分、ミッションはクライブ前に達成してたんだろうね。香澄がさ、地味な練習をあんなに楽しそうにするの見てきたんだもの。なんか、うずくよな、香澄のああいうところ。りみもきっとそうだったんだろ。


 りみは舞台に上がってから変わったよな。文化祭の出し物の提案とか、出来る子じゃなかったろ。一度火が点いたらぐいぐい行くやつとは、意外だった……。あんなに香澄に迫られて逃げ続けた子がさ。それからは要所要所でバンドが行き詰まったら空気を変えようとしたのはりみが一番多いんじゃないかな。最後のオーディションではチョココロネがーって、おどけて見せてた。演奏のミスをフォローしてくれたのもりみだったな。


 おたえの話に戻ると、おたえのやりたいようにやる姿は、オーナーの言っていた「音楽なんて好きなやつが好きなようにやる」の体現だったように思えるな、今では。


 香澄もそういうことが出来る素質のあるやつだったんだろうけど、シャクだけどな。好きなことを好きなようにやるためには、今自分に足りないものに自覚的かどうかってのも含まれてんだろうね。はじめてのオーディションでは、香澄だけが無自覚だった。だから、「お前が一番足りなかった」なのかもしれない。


 沙綾はその逆でさ、好きなことをやるってことに罪悪感を覚えてしまっている。前のバンドメンバー達に悪いところはなにもなかった。ただ、沙綾は応えられなかった。徐々に意識のずれが明確になった。誰も悪くない。ひとつ言えるのは、香澄は、沙綾がいなくて大変とは言わなかった。いなくても大丈夫って言ったんだよあいつ。ビーンボール気味だぞそれ。そうやって、あいつは最後まで急かさなかった。いつでも来ていいと扉を開けっ広げにしてきた。だから来れたのかもな。まあ家族や前のメンバーのフォローのたまものだけどな。


 香澄の声が出なくなったのには驚いた。あいつにもプレッシャーっての、あったのな。まあ、そういうこともあるよ。みんなでボーカルを分担するって言うのは良いアイディアだった。なんか、距離が近づいた、ような気がする。ラーメン、おいしかったよな。


 最後のオーディションは、ミスもあったけどやりきったと言い切れるものだった。オーナーは言葉足らずなんだよな、ったく。でも、なんとかなった。それからは怒涛の毎日。
 

 スペースでは最初で最後のライヴ。演奏してて気づいたことがあった。これから本格的な夏が来る。夏が来たら、もっとバンドがやりたい。そう、ここから始まるって予感がするんだ。



 しゃあねえから、もう少し付き合ってやるよ。ランダムスター、もう雑に扱うなよ。あ、ケースから出すなー!