じゅじゅるさん。2

じゅじゅるのへたれ感想ブログ

るろうに剣心 第30話

 神谷道場に現れる元新撰組志士・斉藤一。宿敵である彼との死闘の中、剣心の中で眠っていた「人斬り抜刀斎」が目覚め始める。
 というのがあらすじ。斉藤の必殺技「牙突」(要するにすごい突き)に苦しめられる剣心ですが、一撃、二撃と受ける度に剣心の動きが鋭くなっていくのが画でよくわかります。こういう対決ものにありがちな「解説役」に弥彦がいますが、彼はすげえとか手加減してたのかよくらいの感想しか口にしない(彼らとはレベルが違いすぎて解説ができない)ため、自然と画の比重が大きくなります。ジャンプアニメとしては比較的常識的な範疇のアクションのため、解説に頼らないとなると、彼らの強さ・戦いの規模の映像化は非常に難しいものと思われます。で、この第30話では二人の激しい鍔迫り合いを表現する為、二人を軸にして近距離から*1カメラをぐるりと回す荒業をやってのけます。カメラが回るのだから当然背景も回る。突いて薙ぐ斉藤、捌いて飛ぶ剣心が尋常ではない速度で、細かく描かれています。引き合いに出すのはちょっとお門違いのような気もしますが、ドラゴンボールの格闘シーンでたびたび解説役が「目で追えない」というようなことを漏らしますが、このときの映像はというと、「本当に映っていない」。空っぽの闘技場が映し出される、という処理がなされることがあります。剣心や斉藤は真っ当な人間ですから、このような表現方法は妥当ではありません。目で捉えるのが精一杯(捉えられないわけではない)な剣戟を表現する為の策として、目が回るような壮絶な戦いを本当に「回してしまう」という発想の転換は素晴らしいの一言です。実際、ここのシーンを何度も見直すと本当に酔います。近接戦をこれだけ濃密に描くのは相当苦労なさったことでしょう。アニメーターの血と汗の結晶であります。
 遠景で画面を動き回るキャラを流麗に描くサムライチャンプルー、迫力で圧す十兵衛ちゃん2、身の軽さと刃の重さを同調させたお伽草子などなど、剣戟アニメでも手法は色々とあるのだなあ。それぞれがてんでバラバラのように見えるけど上記の作品の共通点がひとつあって、画の説得力が高いという点。セリフに頼らず(全くと言うわけではないけど)、強さの加減を見せ方を画に頼りきるやり方は実に骨の折れる作業かと思われます。が、説得力はずば抜けている。アンディフグのかかと落しが恐ろしいものなのが解説なしでもブラウン管越しに伝わるように。ただ、かかと落しをどのタイミングでどのように使うかが大切。それがかかと落しでなく、飛び膝だったり回し蹴りだったりするのはケースバイケース。どれがベストな選択かは状況によって違ってくるのでしょう。が、今まで見てきた剣戟アニメで(少ないけど)どれが好みかと言われれば僕は剣心30話かな、と思うのでありました。
 余談:るろうに31話の中嶋敦子作画監督による美麗な薫殿もそれはそれで素晴らしいものでした。

*1:ポイント